フィン流の接客スタイル【後編】

【前編】

先日、携帯ショップで起きたプチ事件を元にカスタマーサービスを考察しています。

日本とフィンランドで接客のあり方はどう違うのか。そこから垣間見える、働き方の違いとは。良い接客、はたまた、仕事ができるってなんなんでしょうか。

Juho(仮)とOttoは、僕のプリペイドSIMを巡って、壮大なテーマについて考える機会を与えてくれました笑

Juhoの悪気ない眼差し

順番にまず、Juhoについてですが、彼のような対応は日本でなかなか見ることができないでしょう。

日本では不具合があれば、おそらくいかなる理由でも、まず最初にお客さんに謝るのではないでしょうか。フィンランドでは、そうとは限りません。

それなりに海外生活や旅行をしてきたので、この対応を僕は理解できますし、別にJuhoに対して怒ることもないです。

論理的に考えて、彼は何も悪くないからです。会社として謝るみたいな全体主義はありません。

謝る必要があるのは、愛すべきおっちょこちょい・Otto個人です。

過去に仕事でフィンランドと関わった時や、現在フィンランドの人達の働き方を見て、日本人の僕がまず気付くのは、タスクの担当をはっきり分けている為、責任の所在が明確になっていることです。

「それはこの人に聞いてください。」

「ここまでは言えますが、そこからはあの人じゃないとわかりません。」

分業できれば労働時間は予測可能

フィンランドで何度か経験していることですが、メールを個人宛ではなく、組織宛や部署宛に出しても帰ってこないことがあります。

本のタイトルを忘れてしまいましたが、ドイツの働き方を紹介した本にも同じようなことが書いてありました。

要はみんな自分にできることだけに集中しているんですかね。

アドラー心理学を思い出します。

考えてみると、北欧やドイツなどで残業が極めて少なく(例外あり)、休暇も多くてワークライフバランスが整うのは、この “担当の分離” が根源になっている気がします。

逆に残業が多い日本の会社ほど、前もって仕事が上手く割り振られてなかったり、垣根が曖昧だったりして、確認しあったり手伝ったりしているうちに時間は過ぎて行くのかもしれません。

日本では、そもそも新卒採用してから専攻に関係なく配属があったり、ジョブローテーションなるものがあったり、終身雇用(?)を前提としたジェネラリスト作りが大企業ほど伝統的です。

フィンランドでは、個人のスキルに応じて採用され、「担当範囲はあれとこれ、コーヒーブレイクは3回。」みたいに前もって細かく合意があってから入社するようなので、それぞれの人が定時で帰れることを割と予測可能にできますし、システム上、課題を分離せざる負えません。



仕事できる?Ottoが教えてくれたこと

話を接客に戻します。

Juhoの言動は理解できた上で、問題を起こした張本人ですが、その問題を解決してくれたOttoのアプローチは、一歩踏み込んだ、素晴らしい接客だったと思います。モヒカンだけじゃなくて、仕事ぶりも決まってます。

主観にまみれますが、3点素晴らしい部分がありました。

1つ目は、笑顔です。ミスを犯したくせに笑、ヘラヘラするこの接客態度は日本では絶滅危惧種です。

正直僕だって、プリペイド携帯の電波の行方を巡って眉間にシワを寄せたくはありません。改めて事の小ささに気付かされます。

2点目は、番号から検索してダメなら、別の角度(日にち、料金プラン)からソートして、時間がかかってでも証拠を突き止めようとしてくれた泥臭いアプローチ。

そのパソコン画面を見つめる目の真剣さに、僕は彼の本気を感じ取れました。

最後に、自分の判断がつかない部分について、ボスに相談するところまでした点が鮮やかです(当たり前?)。

ここまで考察した上ではっきり言うと、この点においてOttoの経験値がJuhoのそれを上回ります。

わからないことは、よりわかっている人に訊けばいいだけ、という人生の基本をOttoはわきまえていました。

些細なミスなんて誰にでもあること。ちょっとだけめんどくさい出来事だったけど、とんでもない量の気づきをもらえました。