フィンランド式サウナの美学

日本では、サウナブーム が本格化してきているみたいですね。

界隈では、”ととのえ親方” とか、”サウナ師匠” みたいな方々が現れて、サウナのおっさんくさいイメージを取り払い、サウナって本当はめちゃくちゃ楽しくて、気持ち良くて、健康に良い!といった新しいマーケティングをされており、日本のサウナ文化やサウナ好きの層を変えつつあるみたいですね。

個人的には、野田クラクションべべーさんの 「The Sauna」を応援しています。コロナビールが似合うナイトプール的な楽しいサウナより、ハンドカットログでロウリュする(焼き石に水をかけて水蒸気でサウナを暖める)スタイルの方が、サウナそのものの「リラックスする場所」の本質に近いと思うからです。

The Sauna (野尻湖)

日本式サウナの矛盾

僕もここ数年フィンランドに傾倒するようになってから、すっかり “サウナー” になりました。今住んでいるアパートには共用サウナが1階にあるので、くつろぎたい時は、たまに入りにいっています。日本でいうところのスーパー銭湯・パブリックサウナも街に幾つかあって、僕の知っている所だと1回6ユーロで入れます。

考えてみれば、日本の銭湯文化とフィンランドのサウナ文化の親和性はものすごく高いですから、「汗だくのおっさん達が甲子園見てる」みたいな、従来の日本のサウナイメージが払拭されていけば、当然流行っていきますよね。無条件で健康に良いし、気持ちいいんだから。(サウナで甲子園も嫌いではないけれど笑)



ただし、今やフィンランド式に慣れた者の視点からすると、日本のサウナの価値を下げてしまっているのは残念ながら、備え付けられているテレビ画面の存在だと思います。僕にとっては、自分で見たくて選んだ訳でもないチャンネルを見せられる苦痛の方が、サウナの暑さに勝ります。

フィンランド人にこの話をすると、不可解な目で見つめられるんです。「サウナは一日の疲れを癒したり、静寂を味わったり、家族や友達との会話を楽しむ場所なのに、どうしてそこでみんなでバラエティ番組なんて見なきゃいけないだ?」と。正直、僕も昔からずっとそう思っています。

フィンランド式サウナの調和

フィンランド人の生活にサウナは欠かせません。寒い冬を乗り越えるためのアイディアでもあるし、なんといっても、サウナは精神面、健康面、社交面の3つの機能を兼ね備えた憩いの場だと思います。

薄暗く静寂な空間で目を閉じて、ぼーっとしてリラックスできますし、じっくり考える時間となって日常にはない閃きが降りてくることもあります。健康面のメリットは言うまでもありません。発汗した後に湖に飛び込んで”ととのえ”ます。

社交面、この点において、フィンランド式サウナが、テレビでガヤガヤの日本式に少し秀でているのではないかと思います。静寂なので会話が起きやすいし、ロウリュでお互いに一声かける時が会話の糸口になる場合が多いです。

スーパー銭湯通いのおじさま方から「温泉も同じだ」と言われてしまいそうですが、ことサウナに限っていうと、フィンランド式はコミュニケーションの場という性質が元々強いようです。だって、サウナ内でビール飲んでも良いんだから!

Joensuuはすっかり紅葉しました



フィンランドのサウナ事情について、もっと知りたい方はぜひ、こばやしあやなさんの本を手に取ってみてください。

僕もこの本を楽しく読ませてもらいました。

先日たまたま、こばやしさんにお会いする機会があり、一言お話できてとても嬉しかったです。

日本の温泉とフィンランドのサウナは、どんな融合をしていくのでしょうか。

今後の日本における入浴文化の発展から目が離せません。