サンナ マリン首相から学ぶ人生観。「誰がやるか」ではなく「何をやるか」。

現職の首相であるサンナ マリンさんが、最近のTIME(米雑誌)の表紙を飾っていました。

「次世代の100人」の1人として紹介され、ノルウェー首相のエルナ・ソルベルグさんの紹介文では

「彼女は首相就任後まもなくパンデミックへの対応を迫られることになったがすぐに適応し、これまでにフィンランドの感染者数の割合(/人口)をEU平均の5分の1に抑えることに大きく貢献した。優れたリーダーシップは年齢に依存しないことを示した。」

TIME March 1 / March 8, 2021

と賞賛しています。



大事なのは問題点と取り組み。誰がやったっていい。

2019年12月に首相に就任したサンナさんは当時34歳で、メディアは「世界最年少首相」であることや、女性であること、また彼女の生い立ちなどを取り上げました。

メディアは当然そうしたことを話題にしたがりますが、この点に関して彼女は就任直後から一貫したスタンスを示しています。

以下、動画での彼女のコメントに訳をつけました。

「(首相就任について)からくりは別にありません。私はたくさん働いてきました。政界に10年以上いますし(常に)政治に取り組んできました。

そしてもちろん、同僚や、選挙において人々からの信頼を積み上げてきました。ただ自分の仕事をやってきただけです。

もちろん、フィンランドでは年齢や性別が関係ないことを私は誇りに思います。

人々が私の所属する政党(フィンランド社会民主党)に投票し、所属政党がフィンランドで与党であり、現在この(コロナ)危機状況下で政党は私を首相として選出しました。

私は自分のことをロールモデル(模範)だとは感じません。誰かにとってはロールモデルとなるかもしれませんが、

“大事なのはあくまで、私たち全員が取り組んでいるissue(問題点)であり、issueの後ろにいる人々ではない“と考えています。

つまり(裏を返せば)、一人一人が大切” だと考えています。

私は(自身の)娘や世界の全ての子供達、将来世代にとって、世界をより良い場所にしたいです。なのでもちろん私たち政治家は、政治を子供達のためにやっています。」

彼女の理路整然としたロジックは、まさに彼女が述べている通り、年齢や性別が関係ないフィンランド社会の根幹にある考え方を表していると思います。

「本質的であることが最優先される」という言い方が良いかもしれません。



人生を豊かにする金言

「大事なのは問題点と取り組みで、誰がやるかではない。」という言葉は考えれば考えるほど奥が深く、あらゆることに普遍的に言える気がしてきます。

長い人類の歴史を考えれば、誰もがせいぜい100年という、そのほんの一部分しか生きていません。

大きな革命を起こす個人の存在を否定するつもりは全くないですが、歴史に名を残すような人々も時代の要請から生まれた、という風に見ることはできます。

例えば、スティーブ ジョブズやマーク ザッカーバーグのようなイノベーターですらも「インターネット黎明期に、彼らの製品やサービスに潜在ニーズがあった」と考えれば、発明の主が特定的に彼らであった必要はない、と見ることも可能かもしれません。

この例は少し強引かもしれませんが、スティーブ ジョブズの意思を受け継いだアップル社が彼の死後も社会に大きな影響を与え続けていることを考えても、一定の説得力がある視点ではないでしょうか。

環境問題や林業、さらにはSDGsで掲げられるような世界の解決すべき問題に関しては、まさにこの考え方が当てはまると日々思います。

問題点と取り組みがあくまで先にあり、誰がやるかはさほど重要ではない。

けれども、問題解決には多くの人の力が必要で、だからこそ一人一人の貢献が欠かせない。

サンナさんのロジカルで冷静な視点は一見乾いているようですが、真のプロフェッショナルであり、また実は一人一人の存在や日々の積み重ねを肯定する暖かい言葉でもあると感じます。