忘れられない人の恩 vol.3 (ミニー)

新卒で入った会社を1年で辞めた頃、僕はかなり落ち込んでいた。

少し詳しく言うと、5年後、10年後のありたい自分のイメージはかなり描けていて、当時の環境から別の道を歩む覚悟はできていたが、到達点までの道筋が描けなくて、ただただ怖かった。

僕は次に何のあてもないままに会社を辞めた。一旦辞めて時間を作らないと正常な判断ができないと思った。

30歳になる頃に「なりたい自分」になる為には、そのまま同じ職場で時間稼ぎをしていてはいけないと本能的に察していた。

あるのは希望と勇気だけで、周りからの信頼や保証は失ったと思っていた。

いかなる形でも、いわゆる “ドロップアウト”(世間の多くの人が信じる安全な道を外れる)をすると、その道の上を歩いていると思う人達に連絡できなくなる心理があると思う。

いわゆるレールの上では決して感じない危機感、孤独感、恐怖が一気に来て、色んな意味で自立を迫られるから必死に自分と向き合うことになる。大学受験で “浪人” した時に少し似た感覚を味わったが、この状況はさらにタフだった。

当時、近しい交友関係で先に転職したり、フリーランスや経営者といった働き方をしている人はいなくて、客観的なアドバイスや前に進む勇気を誰かから貰うのが難しかった。



ドン底から這い上がるのを助けてくれた人

この状況で僕に手を差し伸べてくれた人、それがミニーだった。彼女は今も僕にとって大切な友人であり、メンターだ。

出会ったのは辞めた会社の英語研修。

新卒で入った会社には英語研修が春に4日間程の合宿、その後は1年間通して月に1日あった。外部の企業研修会社から外国人の先生が各クラスに来ていた。

キャリア形成や自己啓発的な話を度々彼女とさせてもらい、僕が会社を辞めたことが彼女に伝わると心配して連絡をくれ、一番悩んでいる時に会って話を聞いてくれたのだった。

もう長いこと日本に住まれている彼女だが、以前は事業会社で若い時から文字通りに世界を飛び回っていた経験があり、色々と教えを請いたい存在だった。

そんな人だから当然、仕事や家庭に忙しい。その一方で僕は、希望以外に大した物は何も持ち合わせていない、ただの若者だった。

彼女は「いつでも連絡しなさい」と僕が転職するまでに2回も会ってくれた他、普段なら彼女がお金をもらって行うレジュメ添削などもしてくれた。

彼女が応援してくれたお陰で当時なんとか踏ん張ることができ、転職してからも色々と不安が続く中でチャレンジ精神を持ち続けることができた。

あの時受けた施しをこれから恩返し

無粋な言い方になるが、この人間社会は win-win や give & take で成り立っているだろう。

人に良い事をするから自分にも良い事が起こるかもしれないし、人からの信頼は相手に貢献することで得られると思う。

当時ミニーが僕に手を差し伸べてくれた状況は、完全なる一方的な give 。

何か彼女に取り分があった訳でもなく、シンプルに困っている僕を助けてくれた。

そして、その「人助け」は僕をどれだけ救っただろう。

コーチングを生業にする彼女は、いつも決まって「人が成長する手助けをするのが私の一番の歓び」と言っている。

僕が人として成長する姿をこれからも見せることが彼女への恩返しになるなら、僕はあの時を振り返る度に、いつまでも成長し続けたいと思う。