「Sustainable Development Goals(SDGs)」は2015年に国連持続可能開発サミットで定められました。
すっかり日本でも「サステナビリティ」や「SDGs」という言葉は定着し、これらに言及せずにビジネスをしている企業はほとんど見当たらない状態にまでなりました。
1980年代に打ち出された考え方がようやく一般層にまで浸透しましたが、その間に気候変動はさらに進んでしまいました。言い換えれば「気候危機」を迎えてやっと、私たちは地球の持続可能性を強く意識し始めたのです。
リジェネレーション。「持続可能」を再認識するキーワード。
SDGsの元となる「Sustainable development(持続可能な開発)」は定義上、「将来の世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、今日の世代のニーズを満たすような開発」とされています。
現在多くの企業が掲げているサステナビリティ関連の目標は現状この考え方に乗っかっているでしょう。
しかし「気候危機」の現状を考えると、この「持続可能な開発」は “今” に合わせたスローガンとしては少し古く感じられてしまいます。
なぜなら、産業革命以降からこれまでの気温上昇や、野生動物の減少を見ると、地球のサステナビリティに対して、人間社会がもたらしてきた影響はすでに大きなマイナスであると言えるからです。
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つまり、本来「持続可能」と言える開発のペースから大きく借りを作ってしまっているのが現状であり、今からの現状維持では、それはもう「サステナブル」ではないのです。
2021年の今日、私たちは地球資源や生態系にとってプラスとなるアクションを起こして初めて、真の「サステナブル」な状態へと再び向かうことができるのです。
そして、この「プラスのアクション」こそが「リジェネレーション」の根幹となる考え方になります。
Less bad is no good.
「リジェネレーション」は英語で Regenerationと書きます。
Reは「再び」の意味で、generationは「生み出す」の意味です。
「Sustainable development」の定義に欠如している、これまでに失われた自然を取り戻す視点が強調されています。
現状巷で取り組まれている多くの “サステナブル目標” は、今までのやり方で地球にかけていた負担を減らす Less bad(悪くない)の発想に基づいていると言えます。
しかし、リジェネレーションが意図しているのは、全く新しい方法で More good(より良い)な価値を生み出していく変化です。
CO2排出量を例に取って言えば、メーカーが製品を作る過程で排出量を抑える目標を立てても、それは Less bad にしかなりません。リジェネラティブな活動というのは、ここではCO2吸収源を増やすことです。植林や、都市空間の緑化政策などがその一例になるでしょう。
ただ、もちろん More good な活動と合わせて Less bad な取り組みは行うべきで、Less bad を進めていくことにもしっかりと意味があることは言うまでもありません。
リジェネレーションは意識の変革を必要とする
「リジェネラティブな取り組み」つまり「地球環境にとってプラスとなるアクション」を起こす為には、私たちがまず世界の見方を改める必要があると考えています。
経済開発と地球環境の調和が語られるとき、多くの場合、その2つはトレードオフの関係(下図の左)として捉えられます。「経済開発を優先すれば地球環境はより傷つき、環境保全活動ばかりでは利益が出ない」といった語り口です。

しかし、本来は地球環境が土台としてあっての人間生活、そして経済開発であることを忘れてはいけません(上図の右)。
これは新しい考え方でも、理想論でもなんでもなく、立ち止まって考えれば当たり前のことではないでしょうか。
正確に試算されていないだけで、地球環境という「インフラ」の経済的価値は莫大です(生態系サービス)。地球環境は私たち人間や全ての生命にとって根幹となる資産なのです。
地球環境、つまり空気、水、陸地、海、森、動物、人々の健康…などの存続が気候変動により今後さらに危ぶまれれば、経済活動など簡単にできなくなるのです。
例えば、海水温度の上昇でサンゴ礁が死んでしまい、魚が住処を失って少なくなってしまえば、漁業は成り立たなくなりますよね。
そして、このように右の図で考えられるようになると、自然に「私たちの生活や経済を成り立たせるために、豊かな自然環境を取り戻そう」と言う風に考えられるようになります。
つまり、将来も漁業を続けていくためには、乱獲をやめる(Less bad)のに加えて、海中や海岸の清掃活動(More good)を行おうといった具合です。
以上、言葉遊びのようですが「リジェネレーション」の考え方を紹介しました。
新しい言葉や概念が多くの人に共有されることで物事が進むのが人間社会ですから、言葉遊びは全然バカにできません。こうしたマインドがこれからも多くの人に波及することを願っています。
わざわざこの記事を最後まで読んでいただいたあなたは、もうすでにリジェネラティブな活動をされているか、その自覚がなかったとしても、More goodを世界にもたらすスタートラインはもうとっくに出発しているはずです。
そうじゃなきゃこれだけのインターネットの海でこの記事発見しないですから笑
いつか何かの活動で皆さんと交われる時を楽しみにしています。