社会をもっとよくする世界のアイデアマガジン【IDEAS FOR GOOD】に、記事を掲載していただきました。
マヤ文明末期に栄えた城壁都市の遺跡・ メキシコ・トゥルムは、美しい海岸が近隣にあることからも国内有数の観光地として栄えてきた。そんなトゥルムでも近年、熱帯性暴風雨やハリケーンの発生が増加しており、街のすべての交通機関が停止することもあるという。建物の倒壊なども実際に起きており、災害に備えたインフラ整備が喫緊の課題だ。
そんな中、メキシコシティに拠点を置く建築事務所Aidia Studioは、 2021年1月からトゥルムの鉄道駅を改修する計画を発表した。同事務所の創設者、ローランド・ロドリゲス・レアル氏は建築構造について「私たちは、強風に耐え得る駅を設計すると同時に、環境への影響を最小限に抑えるデザインを行う必要がありました」と振り返る。
マヤの伝統的な幾何学模様を彷彿とさせる同駅の形状は、ホームを通過する風や空気の流れをできるだけ多くすることを目指して設計され、雨を避けるために必要と判断された部分だけがガラス張りになっている。駅構内は機械を用いた送換気を必要とせず、茎循環のみによる有機的な冷却が可能だ。
また、マヤ文明以前のヒスパニックデザインの要素は、駅を利用する人々の体験にも大きな付加価値を与えている。利用客は駅構内にいても、その解放的なデザインにより、外部からの太陽光や風、あるいは周囲の美しい自然環境を連続的に感じ取ることができる。