COVID-19のパンデミックが起き、フィンランドが本格的な措置を取り始めたのが3月の半ば。
それから約1ヶ月半が経ち、”Stay home” にもかなり慣れてきました。
その前の生活を上手く思い出せない感覚すら、すでにある気がします。
僕を含め、大勢の人々にとっては “普通” だった頃よりも、きっと落ち着いて「考える時間」が増えたのではないでしょうか。
世界中の人々の感情が大きく揺れ動き、人類の歴史が新たな転換期を迎えている。
生きること、社会のこと、幸せとは何か。
普段なら目を逸らしがちな答えのない問いが、リアリティを持って頭の中に浮かんで消え、また浮かんでは消えることを繰り返す。
そんな今だからこそ、もう一度あの人の言葉に耳を傾けてみたいと思います。

ぺぺの言葉を再考する
南米ウルグアイの元大統領、ホセ・ムヒカさん。
愛と優しさが滲み出る人柄で、国民からはPepe (ぺぺ) の愛称で親しまれている。
2012年の地球サミット(リオデジャネイロ)で行ったスピーチが聴衆の心を捉えると、その後「世界一貧しい大統領」の愛称で、日本でも数多くのメディアが彼の言葉を伝えた。
僕も当時ムヒカさんをテレビで知り、彼の生き方に沢山のヒントを見出した一人。
彼は当時「為政者こそ国民と同じ生活をすべき」との信念から、公邸に住むことはなく、収入のほとんどは寄付に回す事で、質素な暮らしを続けました。
ムヒカさんは、世界中に声を響かせられるほど十分著名であると同時に、消費社会と距離を置く生き方を提唱するには十分説得力を持った、非常に稀有な存在だったのです。
今回は、彼のインタビュー動画などに度々出てくる「消費」と「時間」という2つのキーワードに沿って少し考えます。
行き過ぎた消費主義は幸福を生まない
彼の幸福論に一貫しているもの。
それは「限りない欲を追求し、いくらあっても満足できない状態こそが不幸である」という考えです。
2012年のスピーチにおいても、現代の消費主義社会が生み出す人々の “不自然な生き方” を痛烈に批判しています。
「多くの人にとって生きることは働いて借金を返すことになっている」という彼の指摘はその通りかもしれません。
モノが溢れる今の資本主義世界では、僕たちは少し油断すると「あれもこれも欲しい。だからもっと働かなくちゃ。」というマインドに陥ってしまいます。
しかし、「生活費はこれだけあればOK」といったように限度を決めるだけで、その瞬間から幸せに近づくことは誰にでもできるでしょう。
彼は、世界が資本主義で現状うまく回っていることや、生きるために働く必要があることは全く否定していません。
ただ、「働くことだけに生きちゃだめだ」と強く警鐘を鳴らしているのです。

「時間のゆとり」があなたを幸せにする
ペペは言います。
消費主義マインドに飲み込まれた時、まず失うのは「時間」です。
モノを買うためのお金は働く時間を元に得るのだから、つまりモノを欲しがれば欲しがるほど、時間を払わなければなりません。
どこかで限度を決め、「モノに変えることを目指さない時間」を作らなければ、確かにそれは現代のシステムに洗脳され、働かされていることと同じです。
あえて強い言葉を使うならば、「現代の奴隷」になりかねません。
暮らしの中に、好きなことをする時間という「余白」を作っているか。
家族や友人と接し、愛情を育む時間の「ゆとり」は持っているか。
「焦って生きているな」と感じたら、10分でも20分でもいいから一度立ち止まってみたいものです。