ありがたみに気づくと何かを大切にしたくなる。
環境問題に対する姿勢にも似たようなことが言えるかもしれません。
自然の中に入ってその素晴らしさを感じたり、自然由来の物への理解を深めたり、すればするほど、自然を大切にしようという気持ちが湧いてきます。
以前、下の記事でキシリトールガムの “キシリトール” が白樺の木から取れることを紹介しました。
今回は「ワインのコルク栓ができるまでの過程」が少し意外かもしれないので、ご紹介します。
コルクってなんだっけ
ワインの蓋として僕たちが目にする「コルク」の作り方を知っていますか?
その作り方は、実にシンプルで意外。
発泡スチロールになんだか似ていて合成樹脂素材っぽい。削るとパラパラにもなるから、木屑をのりで固めてるのかな?なんて思う人もいるかもしれません。
でも、実はその素材自体はなんの加工もしていなくて、「コルク」はもうすでに木の中にあるんです。
コルク栓ができるまで
まず、(1)木の樹皮を剥がします。
“木” と言っても、どの木でも良いわけではありません。「コルクガシ」と呼ばれるこの木は地中海性気候の元で育つため、ポルトガル・スペインを中心に地中海に面したヨーロッパ・アフリカの国で生育し、太陽光をたっぷりと浴びて分厚い樹皮を身につけます。

これらの地域では、農業などと同じでもちろんコルクガシを商用に “栽培” しているので、収穫の時期に下の写真のように、一気にコルクガシの樹皮を剥がし取っていきます。

あとは、(2)剥がした樹皮を工場でコルクの形にくり抜きます。これで完成。

樹皮の弾性を増すための「高温蒸気処理」が間に挟まりますが、基本的には「木から取って、くり抜く」だけなんです。
エコロジー優秀選手なコルク
コルクはかなりハイレベルなエコロジー素材といえます。
エコな理由1:樹皮まるごと利用
まず、ここまで見てきた「コルク栓」くり抜き作業が終わると、切り抜けなかった部分が残りますが、この残材も余すことなく利用されています。
メッセージボードとして使うコルクボードや、コースターなど、インテリア用途での利用をみなさんも目にするのでは。これらは一度粉砕してから、成型加工を行います。木に由来しているので、コルク素材は部屋に暖かみを演出するでしょう。
他にも、そのおしゃれ感を取り入れて「女性のハイヒールのヒール部分」、その弾力性を利用して「野球の硬式球の芯」「バトミントンシャトルの先端」など、”地中海に生えた木の皮” はあらゆる所で役に立っています。
エコな理由2:200年生き、CO2を吸い続ける
「人生100年時代」という言葉を数年前からよく聞くようになりましが、コルクガシの木は、僕たち人間の2倍近く(150~250年)生きます。
樹齢25年ほどになると1度目の樹皮の剥ぎ取りが行われ、トカゲのシッポのようにその後も樹皮は生まれ変わり続けて、約10年スパンでこの剥ぎ取りが繰り返されます。その生涯を通してコルクガシの木は、12回以上はこの仕事をやってのけるといいます。
“長期間生きて樹皮が生育し続ける” ということは、つまり “木として主要なCO2の吸収源であり続ける” ということです。
木も人間と同じで、いわゆる “成長期” にモリモリCO2を食べます。伐採によって「カーボンサイクル」を回す場合と違って、樹皮だけ剥ぎ取るコルクガシの場合、ものすごく簡単に表現するなら “成長期を100年以上延長” しているようなものです笑
カーボンサイクルについては、こちらの記事の「CLTの長所1: CO2排出を抑える」で解説しています。
ここまで読んでいただいた方は、きっと明日からコルクを見る目が変わるはず。
今後ワインを美味しく飲む時は、ポルトガルのコルクガシ農家さん達に想いを馳せてみてください。
参考動画
参照記事
Cork Studio