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学生から”社会人”はグラデーションのフリースタイル
大学院3年目が始まる時、僕はそれまでの学生ビザ(Bタイプ)から、今働いている会社でフルタイムで働き始めることで、ワークビザ(Aタイプ)に切り替えました。
Aタイプビザを取ることで学費免除になったのは、相当なファインプレーでした。
というのも、上記リンク記事で紹介している通り、2年目までに僕が払っていた学費は、大学から受ける8割の補助(奨学金)後、自費10万円/学期でしたが、補助期間は2年間でしたので、Bタイプ(学生)ビザのままであれば、3年目からの学費は自費50万円 /学期に上がるところでした。
論文は自主的な作業ですから、50万円/学期を支払うのもおかしな話で、ここはどうしても回避したいと思っていました。上手くビザを切り替えて、学費をタダにできたので会社には感謝です。

Kontiolahti Biathlon (2022)
と、このようにEU圏外からやってきた僕は「必死こいた」訳ですが、フィンランド人(およびEU圏内から)の学生は学費という概念が元々ないので、卒業をあまり急ぐ必要がありません。
「とはいっても、いつもでも学生じゃ」とツッコミが来そうですが、フィンランドでは学生インターンが盛んで、カリキュラムに盛り込まれていることも多く(僕もインターンのレポートを書いて12単位取得)、まさに僕と同じように、学生身分である内に仕事に専念し始めて、フルタイムになるケースは多いです(ほとんどが修士学生)。
そうなると何が起こるか。
「今は仕事で手一杯だから、論文は時間に余裕ができたらやろう☆」となります。
僕の同僚にも「あと何単位残ってるけど、5年前から学業は何もしてない」みたいな人は珍しくありません。
日本のように「卒業→就職」、「留年」、「社会人」みたいな概念がないので、フリースタイル。
カラオケの延長でも追加料金がかかるから、それよりも気軽に彼らは学業を延長しています。
もっと言えば、学生アパートや電車料金の学割等々の恩恵を受け続けられるので「Why not 延長?」。
僕がワークビザ取得をマネージャーに相談した時も「That´s so Finnish haha。いいよー!」みたいな感じでした。
「卒業」ってそんなに大事?
これを高福祉の闇?みたいな感じで取る人もいるかもしれませんが、総人口に対する割合で言えばこういう人たちはごく一部で社会問題になるほどじゃありませんし、そもそも彼らは学生であるうちから働き始めて税金を納めていますから、学割を少し利用し続けようと、国の税収に対しては基本的にプラスをもたらす存在です。
僕自身は、Aタイプビザにより学費がかからなくなったことで、フィンランド人と同じように卒業を急ぐ必要はなくなりましたが、いつまでもフィンランドにいると決めている訳ではないですし、区切りをつけて物事を進めたいタイプなので、学業の手を止めることはありませんでした。
しかし、あくまでも個人個人で様々な事情がありますし、大学とは本来年齢など全く関係なく万人に開かれた場所であり、「学び」はしたい人がしたいタイミングでするべきものです。
専門分野で何年か職務経験を重ねることで、論文で書ける内容も確実に幅を広げるでしょう。
日本の文脈だと、学生が「実際に社会に出てみないと働くイメージが湧かないし、学生でいるうちはやりたいことがわからない。けど就活しなきゃ。」となりがちですが、フィンランドシステムはこの辺を上手くケアできています。
そういった意味では、履歴書の「卒業」の一行がやたらと重んじられる多くの国の社会システムよりも、有機的で、本質をいっている感はあります。
少し長くなりましたので、この辺の社会システム話は、また焦点を変えて書きたいと思います。
Hyvää päivänjatkoa! (良い一日を!)